[NOVEL] 1 2 3

【月の獣.3】

 男の首から唇を離し、ユフィルはエルディットの体を右足一本で自分から蹴りはがす。血のついた唇を舌でなめた。エルディットの首に、それとわかる傷はない。
 命の失せた体が床に落ちてころがるのには目もくれず、扉の前の青年はユフィルを見つめていた。
「シルギス‥‥」
 ユフィルは青年の名を呼んで、微笑をうかべたが、青年──シルギスはニコリともせず、死体をまたいで寝台のそばへ歩み寄ると、腕を組んで見おろした。
「何をしているんです?」
「‥‥食事を」
 ユフィルがまばたきしてシルギスを見上げたが、シルギスはつめたい眸のまま首をふった。
「ではなくて。どうしてオジーフのところで待っていなかったんです。戻ると言ったはずです」
「こんな時に、そんなこと言うんだ」
 強情そうに口元をこわばらせ、ユフィルは壁の方へ顔を倒した。シルギスは溜息をついて寝台に腰をおろす。のばした手でユフィルのあごをとらえ、自分へ向かせた。
「待っていると、約束したでしょう。‥‥心配しましたよ。追いつくのに10日もかかった」
「だって──」
 反論しかかる唇を、身をかがめたシルギスの唇がふさいだ。ユフィルの体は枷と革紐にとらえられて腰が浮いたままだ。二人は互いを強く求めて舌をからませ、唇を強く味わいながら幾度もくちづけを深めた。
 シルギスはユフィルのそばへ腕をつき、真上から顔を見おろして囁いた。
「見つければ、愉しそうに食事などなさっている。‥‥どうでした?」
「おもしろかった。思ったより上等。けど──」
 言いかかって、ユフィルは大きく息をつめた。シルギスの右手が彼の楔をつつみこみ、ひどく淫らにうごめき出している。こらえきれずにあえいだ耳元へ、シルギスが囁いた。
「その枷、聖銀のまじないがかけられていますよ。あなたにはまだ解けないでしょう、ユフィル。こんなふうに簡単に人間にひっかかって、どうするつもりです? こんな格好までさせられて、愉しんで。いつから私が見ているのに気がつきました?」
「‥‥やっ‥‥」
 しごき上げられて、たちまちユフィルの中心は硬さをとりもどす。握りこまれて先端だけをやわらかく指の腹でこすられると、もうたまらなかった。シルギスの手から体の内側を溶かすような快感の波が生み出され、その波はふれられてもいない深みをゆっくりとかき乱す。
 すすり泣くような声をあげ、ユフィルは体をよじったが、シルギスは愛撫の手をとめも強めもしなかった。単調に撫でながら、黒い眸で彼を見おろしている。
「さぞ愉しかったことでしょう。そりゃあ、食事は愉しいにこしたことはありませんけどね。私が追いついてくるのを待っていたくせに。あんな声をあげて。一人じゃその枷もとけやしない。まったく、困ったお人だ」
「あいつをあやつるくらい、簡単な──ああっ」
 突然に強い刺激をくわえられて、ユフィルは首をのけぞらせる。浮いた腰がくねって、ひどく淫らにシルギスの愛撫を求めたが、それ以上のものは与えられず、たぎりつづける欲望にたえかねたユフィルがしゃくりあげた。
「シルギス‥‥も‥‥やめ‥‥、外してっ‥‥枷‥‥っ‥‥」
「少しはあなたに思い知っていただかないとね」
 シルギスの微笑を見上げて、ユフィルは体が溶けるような火照りを感じる。ねだるようにあえいだが、シルギスは緩慢に楔をもてあそぶだけで、ユフィルに応えようとしない。どうしようもないことはわかっていた。もう二月も会っていない。エルディットの愛撫の下でも、ユフィルはずっとシルギスを欲しがっていた。こうしてやっとふれられて、それなのになぶられる刺激はひどく曖昧で、飢えだけがつのる。
 気が狂うほどシルギスがほしかった。だがそれを知られるのもくやしい。わかっているように涼しい顔をしているシルギスの態度も頭に来る。じれた体をゆすりながら、ユフィルはわめいた。
「馬鹿! 大嫌いだ! 一月で帰るって言ったくせに、ずっと人のこと放っといて──もう、外して! すぐこれ外して!」
 シルギスがにっと笑ってななめに体をかがめ、ユフィルのたけり立ったものを口に含んだ。ユフィルが甲高い悲鳴を上げる。強く吸われると声もなくあえいだ。革紐に吊られている左足がバタつき、紐がちぎれる。右脚はシルギスの体の下になっている。自由になった左足を立て、腰を強くくねらせた。
「大っ嫌い──あああっ!」
「そんなこと言われると、酷いことをしてしまいそうですね」
 茎の腹をシルギスの指が抑え、根元にかけて強く握りこんた。シルギスは顔を上げ、肩ごしにユフィルを見て微笑する。怒張にくいこむような痛みと快感が脳天までつきぬけて、ユフィルは頭をふりながら呻いた。愉しむ余裕もなく、苦悶に近い強烈な感覚に全身を支配される。そのすべてが腰でせきとめられ、内側にたぎりながら熱く渦巻いた。
「やっ‥‥シルギス‥‥やだぁ‥‥っ」
「ちゃんと。言って御覧なさい。言えるでしょう、ユフィル?」
 優しい声で囁かれ、楔の先端をやわらかく吸われると、体の奥にするどい快感がはしった。それすらも行き場がない。ユフィルは乱れた声で呻いた。
「大、嫌い‥‥っ!」
「私もですよ。こんなふうに、勝手にいなくなって、見つけてみれば腰を振ってるなんて、あんまりだと思いませんか? 私はずっとあなたを心配していたのに。ひどい人だ」
 ふっと笑う息を先端へ吹きかけた。そんな刺激にもユフィルの体がはねる。枷の鎖がぶつかりあって、耳障りに鳴り響いた。
「やっ‥‥いやっ‥‥」
「彼におねだりできたんだから、私にもできるでしょう? 大嫌いでもね」
「‥‥シル‥‥ギ‥‥スっ‥‥も、やめ‥‥」
「そんなに嫌いなんですね」
 唇に笑みを浮かべたまま、シルギスはまたユフィルのそれへ舌をからめる。口には含まず、舌先で先端を強くつつき、しばらくかすれた声の反応を愉しんでから、やわらかに吸って、歯でこすった。
 ユフィルが切れ切れの声をたてる。ゆすろうとする腰を腕で押さえつけ、腹に飛び散っていたユフィルの精を、シルギスは舌を全体に使って丁寧になめとった。ユフィルが荒い息をつくたび、肌が激しく上下した。
 きれいにしてやってから、さらに舌で楔の先端を優しくなぶる。しばらくそうしていると、ついにユフィルが屈服して、小さく呻いた。
「‥‥ん‥‥イカせて‥‥シルギス‥‥」
「きこえませんよ。さっきまで、あんなに威勢がよかったじゃないですか」
 ちろちろと舌先を這わせながら、シルギスは笑った。屈服したユフィルの声は甘美だ。さっきのエルディット相手のように遊んでいるわけではなく、本気で快楽の前に崩れ落ち、何もかも忘れて彼の愛撫をほしがる。
 すぼめた舌先で強くつつくと、ユフィルが悲鳴をあげた。声はかすれきっていた。
「もう──ああっ、イカせてっ!」
「惜しい」
 指がかすかにゆるんだが、解放をゆるすほどではない。わずかな予感だけで快感が一気にそこへ押し寄せて、せきとめられた波が体の芯を逆巻く。どうしようもない。ユフィルは身も世もなくあえぎながらねだった。
「おねがい! おねがいだからぁ、イカせて‥‥っ!」
「いい子です。よく、できました」
 微笑して、シルギスはユフィルの楔に口をかぶせながら、ゆっくりと指を外していく。そっと含みながら時間をかけて指を解いてやると、ユフィルが長い声をもらした。
 解放されたが、まだ達せない。シルギスの手と舌が巧みに絶頂をそらしてしまっている。
 喉の奥でしゃくりあげ、狂おしく頭をふった。シルギスが、口に含んだまま体の位置を変えて、ユフィルの脚の間にひざまずく。ユフィルの両足がシルギスの首にからみついた。
 熱い口が彼のものを深く呑み、ゆっくりと熱い愛撫をくわえていく。唾液の音をからめて全体をすすりあげた。ユフィルが腰をゆすってシルギスの名を呼ぶ。シルギスの肩にかかった足先が宙で踊るようにはね、指の先までそりかえった。
「ああ‥‥あ‥‥っ‥‥」
 シルギスが強く吸い上げる。体の内側に溜まっていた熱が一気にほとばしって、ユフィルは目の眩む快感に甘い叫びをあげながら、全身をつらぬく絶頂の奔流に身をゆだねた。


 シルギスが身をおこし、小さな息をついた。口元をぬぐう。
 荒い息に全身を波打たせるユフィルを見やって、ふ、と優しい微笑をうかべた。
 ユフィルの足首にちぎれてからんだままの革紐をほどき、赤く残った痕にふれて力を流しこみ、癒す。肌をなでると、ぐったりとしたユフィルが呻いたが、投げ出された体を動かすことはできなかった。
 シルギスが手をはなすと、肌からいましめの痕は消えていた。今度はユフィルの頭側に移動して、彼の両腕をからめとる枷にふれる。もともと、彼らのような生き物をとらえるためにつくられたものなのだろう。枷には古い聖銀の封じ魔呪がかかっている。シルギスに壊せないことはないが、無理に壊すとユフィルが傷つくだろうと判断し、彼は床に横たわったエルディットの死体をさぐった。思ったとおり、ポケットから鍵を探し出す。
 枷を外すと、手首に残った痕も同じように癒した。まだぐったりしているユフィルの体を抱き起こし、強く抱きしめる。背中に残った革紐の打擲痕に手のひらを這わせながら、囁いた。
「心配したんですよ。本当に。どうして待っていなかったんです」
「‥‥待つの、嫌いなんだ」
 ユフィルの腕がのろのろと上がって、シルギスの背中に回る。溜息をついたようだった。
「毎日、毎日。嫌なんだよ」
「そう‥‥」
 背中の傷も消えた。抱きしめて、乱れたユフィルの髪をすいてやる。
 ユフィルが顔をあげる。何か言おうとするのを指でとめて、シルギスは唇をかさねた。優しい、ゆったりと深いくちづけを与える。
 ユフィルの唇は熱い。顔が離れると、少年はうるんだ眸で彼を見あげた。
 小声で言う。
「ねぇ。‥‥して」
「ここで、今?」
 うなずいた。シルギスは笑って、汗で顔にはりついた髪をどけてやる。
「あれだけおねだりしておいて、足りなかったんですか」
「だって‥‥」
 ユフィルは拗ねた声を出した。体は達しても、シルギスへの欲望は一向におさまらない。肉体的な絶頂だけの問題ではなく、とにかくシルギスの肌が欲しいのだと思ったが、うまく言うことができなかった。二ヶ月。シルギスと出会ってから、ユフィルはこれほど長く離れていたことがない。
 見おろしていたが、シルギスはユフィルを抱きしめると、体がきしむほどの力をこめた。
 ユフィルが呻く。泣きそうにねだった。
「して‥‥っ」
 耳元でいたずらっぽい声が囁いた。
「だめ」
「どうして──」
「言ったでしょう、少し思い知ってもらわないとね。せめて、一日くらい。我慢なさい」
「‥‥酷い!」
「もっと酷いことしてもいいですけどね」
 笑みをうかべたまま、シルギスはユフィルの体をはなした。
「さ、起きて、服を着て。夜のうちに距離をかせぎましょう。昼の旅は、とにかく疲れる」
 まだ何か言いたげだったが、ユフィルは言われるままシルギスに従った。シルギスが食堂で水の入った水瓶を見つけてくる。ユフィルは寝台の上に座ったまま頭から水をかぶり、ざっと毛布で香油をぬぐいおとすと、立ちあがって服を着た。
 ボタンをはめながら、倒れた男を目でさす。
「ねえ。そいつ、昔、誰かに喰われたみたいだよ。しるしがあったもん。シルギスの食べ残しじゃないの?」
「そうですね。このあたりを通ったことはありますね」
 あまり大したことだと思っていない返事がもどってきた。所詮、一夜の食事のことなどほとんど覚えてもいない。それはユフィルも同じだった。食事にいちいち気持ちを取られていては、生きていけない。
 シルギスはユフィルの髪から水をぬぐい、後ろへまとめてやりながら、
「地下に、手首を切り裂かれた少年の死体が10ばかりと、古い男の骨がありましたよ。このあたりは最近、人さらいが出ると聞きましたけどね」
「‥‥人間の方が、ぼくらより怖いよねえ」
「さ、行きましょう」
 丁寧にリボンを結んで、ユフィルの腕を引いた。マントと荷物のたぐいは食堂に置きっぱなしになっている。立ち上がり、ユフィルはシルギスに肩を抱かれながら廊下を抜け、木の長椅子が並んだ礼拝堂を通って神館の外へ出た。
 蒼い夜空に、銀の雫をおとしたような月が浮いていた。ふっくらとしてはいるが、まだ満ちるには足りない。全身を月光に濡らして、ユフィルは吐息をついた。すずしい夜の光が体に染み渡り、うるおしていく。
 シルギスも同じように月を見上げていた。黒いマントをまとった姿はほとんど闇のように夜に溶けている。
「シルギス」
 ユフィルが一歩うしろから呼んだ。振り返ると、少年は両開きの扉の脇へもたれて微笑んでいた。月光に頬の輪郭が白く浮きあがり、金の髪は青めいた輝きをおびていた。
「おなか、すいてない?」
「‥‥‥」
 シルギスは目を細めて、答えなかった。だがその目の中に一瞬きらめく炎を見て、ユフィルは笑みを深くする。まちがいない。シルギスは、彼を探して、昼間の旅をしたのだ。
 夜の一族の陽光に対する耐性は、それぞれだ。ユフィルは、かなり強い。夕暮れならばほとんど困難を覚えずに外を歩くことができるし、ある程度日陰でしのげれば、昼の陽射しにもすぐに消耗するというわけではない。これほど強いのは珍しいと、シルギスは言う。
 シルギスも強いほうだったが、ユフィルの耐性にははるかに及ばない。昼間、陽光のもとを旅して平気なほどの耐性は持っていなかった。ひどく消耗しているにちがいない。
「こっちおいで。シルギス」
 白い手をのばして、招く。シルギスは無言のまま、ユフィルへ近づいて、けぶるような青霧の瞳を見おろした。
 ユフィルが左手の袖を肘までぐいと上げ、白い手首をシルギスへ見せる。シルギスがゆっくりと手をのばしたが、それを押しのけて、シルギスの肩へ右手をのせた。かすかな力をこめる。それは命令だった。
 シルギスが微笑んで、命じられるままにユフィルの前へ片膝をつく。頭を垂れた。
「ユフィル‥‥我が主人」
「シルギス」
 名前を囁いて、美しい貌で驕慢にシルギスを見おろしたまま、ユフィルは自分の左手首に爪をすべらせる。血が流れ出す手首を、膝をついたシルギスの目の前へ差し出した。シルギスの唇がためらいなくそれをむさぼりはじめる。その感触にぞくりとして、目をとじた。
 食事を終えて満たされている力が、シルギスへと流れこんでいくのがわかる。分け与え、分かち合う。ゆるやかで深い官能が互いを結びあわせた。こうして与える血を通じ、彼らは互いを支配する。シルギスよりはユフィルの力の方が強い。その力でより強く相手を支配し、より多く与えていた。
 シルギスは、ユフィルの血を好んで飲む。人よりも、ユフィルから与えられることを望んだ。血も、精も。そうしてユフィルに支配されることを望んだ。
 はあ、と深く満たされた息をつき、シルギスはユフィルの手から顔を上げる。手首の傷はふさがっていた。
「我が主人」
 もう一度、呼ぶ。黒い瞳は与えられた血に昂揚して、ユフィルを従順に見上げていた。
 だがそれも一瞬、立ち上がって、シルギスはユフィルへ唇を重ねる。血の味がするくちづけにむさぼられて、ユフィルが我を忘れながら応じようとした時、体が離れた。
 そっけないほどの声で、
「行きますよ」
「‥‥ねえ、会えたの?」
 歩き出すシルギスを小走りに追って、ユフィルは口をとがらせる。シルギスを支配しているのも自分、シルギスの主人なのも自分なのだが、シルギスを抑えつけることができない。それが何故なのか、ユフィルにはよくわからない。
 遠くで獣が長く啼いた。シルギスは追いついたユフィルの髪をなでて、
「会えませんでしたよ。探していて、帰りが遅くなったんです。あなたがそんなに淋しがるとは思わなかった」
「‥‥‥」
「もうこの国には、私たちの仲間はいないのかもしれませんね」
 その声があまりに静かだったので、ユフィルは胸の深いところを衝かれたような思いでシルギスを見た。
「‥‥シルギス、淋しい?」
「私にはあなたがいるから」
 微笑して、シルギスはユフィルの首すじをなでる。一瞬の快感にぞくっと身をふるわせたユフィルをいたずらっぽく見やった。
「一晩、我慢なさい。後で、色々してさしあげます。‥‥私も、あなたに会えなくて淋しかった」
「‥‥‥」
「ただですむとは思ってないでしょう?」
 囁くと、ユフィルの頬がぱっと赤らんで、少年は無言のまま拗ねたような顔を夜の道へ向けた。足取りが段々早くなる。シルギスもそれに合わせた。ほとんど足音はない。二人はたちまちその速度をはやめ、マントの影を後ろに引きながら、夜を蹴って飛翔するように月光の元を走り抜けた。
 ユフィルは、彼が何のために仲間を探しているか知っているのだろうかと、シルギスは思う。シルギスが仲間を探すのは、自分のためではない。ユフィルのためだ。
 夜の一族は長く生きる。実際に寿命のようなものがあるのかどうかさえ、シルギスは知らない。知るほど多くの仲間に出会ったことがなかった。だがもしかしたら、十分長く生きてきた自分は、年若いユフィルよりはるかに早く死ぬかもしれない。その時にユフィルを一人で残していきたくはなかった。
 いつか。いつかくるかもしれない別れのために。
 そのことをぼんやりと考えながら夜を抜けて疾っていると、ユフィルが速度をゆるめ、肩ごしに振り向いて微笑した。風に髪が散っている。
「言い忘れてた。お帰り、シルギス」
「‥‥ええ。ただいま」
 微笑を返し、シルギスは速度を戻したユフィルを追う。これなら、夜明けの前に心当たりのねぐらへたどりつくだろう。そこに身をひそめ、陽光のとどかない場所で、たっぷりとユフィルを味わうことができる。別れのことなど考えず、ただ肌を合わせて満たされて。
 ユフィルの金の髪が風になびいて月光をほそく散らしている。二人は互いの気配を感じながら、マントを背にひるがえし、獣のような敏捷さで夜を翔けていった。

-END-

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