シゼもイーツェンも来たるべき別離について口にしないまま、三日がすぎた。かと言って不自然に無視しているというわけでもなく、二人の雰囲気はおだやかなものだった。
もう決まったことは、決まったことだ。今からくつがえすことも、やめることもできない。二人はそれを知っていた。
まるで以前からの習慣のような態度で、シゼはイーツェンの「名」を練習し、三日目にはイーツェンも満足する出来ばえで書き上げられるようになっていた。これならリグの民にはわかると、イーツェンは思う。見ればわかる。王族の名というのは、そういうものだった。
ほっとする一方、ほかにできることはないかと考えをめぐらせたが、何も思いつかなかった。イーツェン自身は、金も物もほとんど持っていない。リグの商人にシゼへの礼金を出すようたのんだのはそのためだ。リグからは、その商人宛に定期的にいくばくかの金が流れていて、イーツェンがほしいものがあれば彼を通じて金を手に入れることが可能だった。もっとも、一度も利用したことはなかったが。イーツェンは身を飾ることには興味がなく、衣服を仕立てる布はリグから送られてきたし、紙や羽根ペンなど身の回りで使う品はユクィルスの城にあるものを使うことができた。何かを望みさえしなければ、不自由な暮らしではない。
もしこんなふうに陵辱を受けなければ、ここで生きることはたやすかったのだろうか──と、イーツェンはふいに考える。自分でもよくわからなかった。少しは楽だっただろうが、所詮は虜囚の身であり、脚の鎖が忘却をゆるさなかった。
もしオゼルクがイーツェンを無理に追いつめるようなことがなければ、彼とシゼはどんな日々をおくったのだろう。それでも、シゼに惹かれただろうか。シゼの固い殻の向こうにある誠実さや実直さに、気付くことができただろうか。
それはわからない。もう二度と、わからないことだった。何もかも取り戻せない。
かなうなら、もっと普通の状況でシゼを好きになりたかった。心にわずらいもなく、ためらいもなく、互いに腕をのばせるような。その現実味のない空想は、イーツェンの頬に微笑をうかばせる。空想だけなら、いくらでも思いがかなう。
もし、シゼとともに城を出られたら。
(もし、二人でリグに帰れたら──)
いつか、とイーツェンはつぶやいた。もしかしたら、いつか。
死者が魂の回廊を抜けてふたたびこの世に生まれてくるというのなら、次の世で、それともさらに先のいつの日か、彼らはふたたび出会えるかもしれなかった。
その時には何もかもを捨てて、シゼを選びたい。そんな時がくるのなら。
──いつか。
とりとめのない空想をもてあそびながら小さな窓から見上げる空は、深まった秋の色をしている。窓辺に座るイーツェンの肩を、歩み寄ったシゼが黙って肩掛けでつつんだ。
イーツェンが肩の手に自分の手を重ねる。シゼは何も言わず、身を寄せて立っていた。
彼らの時間は、もう尽きようとしていた。
オゼルクから晩餐の招待を受けたのは、その翌日の午後のことだった。
もう正午の鐘もとうにすぎてから使いの口上を受け取り、イーツェンは困惑した。あまりにいきなりのことでもあったし、オゼルクからの招待というところに、不吉なものを感じた。明日シゼが城を出る、その時を狙い澄まされたような気がした。
シゼが城を去ることを、イーツェンはできるかぎりオゼルクに知られないようにしていた。5日という短い期限をきったのもそのためだし、ジノンにもなるべく素早く事をすすめてもらった。だが、その気になればオゼルクが知るのは簡単だ。
知られたのだろうか?
「‥‥欠席しようかな」
そう呟いたイーツェンに、シゼが首を振った。
「失礼になりますよ」
「でも。何か嫌な感じがする‥‥何か、あったら」
「オゼルクはわざわざ私のために晩餐をひらいたりしませんよ」
あっさりと、至極もっともなことを言われて、「それはそうだけど」とイーツェンは口ごもった。たしかに、何か言いたいことがあるならイーツェンとシゼを直に呼びつければいいことだ。晩餐に何かあると勘ぐるほうがばかばかしい。
気にしすぎなのだろうと思ったが、不安な気持ちは腹に凝ったままだった。オゼルクを恐れすぎているのかもしれない。そんな自分に溜息をつきながら、イーツェンは承諾の返答を使者につたえた。
それは、20日ほど前に王太子ローギスを迎えて行われた夜宴よりはるかに小さなものだったが、顔ぶれを見回して、イーツェンは奇妙なひっかかりを覚えた。
下座の長卓を、革鎧や軽い胸当てを身につけた男たちが囲んでいる。兵士だと一目でわかる彼らは、剣こそ帯びていなかったが、命のやりとりをする者独特の荒々しい暴力の気配をまとっていた。
彼らが何のために招かれたのだろう。イーツェンは王族のならぶ卓のはじに座り、伏せたまなざしを目の前の酒杯へ据える。シゼと同じなりわいの男たちだとわかっていたが、集団で長卓を囲む男たちの周囲には粗暴な空気がたちこめていた。
だが、もしレンギがシゼを見出して自分の護衛にと引き抜かなければ、シゼは彼らの一員となっていたのかもしれない。
そう思うと、イーツェンは少しちがった気持ちになる。ふたたび、兵士たち目を向けた。剣呑な雰囲気をまとった集団に見える彼らの一人ずつにも、名があり、シゼやイーツェンのようにそれぞれの人生があるのだ。誰もが同じ、数えきれない偶然と選択をくぐりぬけた先にある生を、確たるよるべもなく生きつづけているのだった。
上座の長卓には、王をはじめとして王族と役人が顔をならべている。二年も城にいる以上見知った相手は多いが、イーツェンは彼らの一人一人をよく知らない。王族の多くは、イーツェンと礼儀正しい距離を保っている。「人質」と妙に親しくなっても仕方ないと言うことだろう。
──それとも、彼らは知っているのだろうか。
落ち着かないまま、少しぼんやりとした視線をさまよわせながら、イーツェンの心に疑いが動く。オゼルクとイーツェンとの関係を、あるいはルディスやローギスまでも巻き込んだオゼルクの「遊び」を、知られているのだろうか。それに関わるまいとして、彼らはイーツェンにおだやかな距離をおいているのかもしれなかった。
胸が悪くなるような想像だった。
イーツェンが服の下では脚に枷をはめられ、奴隷のように鎖でつながれていることを、彼らのほとんど皆が知っている。知られながらとりすました顔でここに座っていることすら、イーツェンには耐えがたいと言うのに。この上、もてあそばれていることまでが衆知の事実なのだとしたら。
目のはじで、何かがひらひらと動いた。
まばたきして、散漫な注意を引き戻す。長卓の右斜め向かいで、子供がこちらへ手を振っていた。
フェインだ。この秋で8つになった王の末子は、にっこりと邪気のない笑みをイーツェンへ向けてくる。最近は話す機会もめっきり減ったが、イーツェンに会うたび異国の物語をねだった子供だった。イーツェンは微笑して、小さく手を振り返す。オゼルクとは母親のちがう弟だと言うが、目と髪の色以外はあまり似ていない。
底のない笑顔が、落ちこんでいた気分を少し引き戻した。イーツェンは姿勢を正し、頭をまっすぐ上げる。せめてこのひととき、外見だけでも矜恃を保っていたいと思う。かすかな誇りのほかに、もはや何も持たない身であっでも。
上座で人の動く気配があり、イーツェンは顔を向けた。王が横に座るローギスに何か言い、ローギスが立ち上がった。応じて、イーツェンも含めた全員が立つ。王だけは座ったまま、腕組みして気怠そうにローギスを見上げた。その動きはこわばって、のろい。
(当代の王は病を持っている)
レンギの言葉を思い出して、一瞬、イーツェンはたじろいだ。たしかに王の姿は健康とは言い難いもので、痩せた体が服の中でさらにしぼんでいるようにすら見える。凝視することもできず、卓上に目を落としていると、ローギスが朗々とした声で話し出すのが聞こえてきた。
「今宵の集いに、神々の祝福のあらんことを」
この男はこんな声をしていたのかと、イーツェンはおどろく。何度かこうして宴で話す声を聞いたことがある筈だったが、まるで記憶に残っていない。イーツェンにとってのローギスの声は、オゼルクに話しかける時の奇妙に傲慢な声音と、イーツェンを犯しながら時おり洩らす呻き声だけだった。
幾度も体を合わせながら、二人は言葉を交わしたことがない。ローギスがイーツェンに話しかけたことはなく、イーツェンがローギスに話しかけることもなかった。ローギスが自分の名を知っているかどうかすら、イーツェンは疑っている。オゼルクが手にしているおもしろい玩具をもてあそぶ、そんな程度の興味しかないだろう──ローギスの抱き方はいつも淡泊で、乱暴で、一方的だった。欲望を解消するための道具としてしか、イーツェンを見ていない。
こうして同じ席にいて、イーツェンのことをまったく意識する様子はないのも、芝居ではないだろう。どうでもいいのだ。
その男が石壁に反響する深い張りのある声で語る言葉をききながら、イーツェンは目のすみでオゼルクの姿をぬすんだ。ローギスの脇に立ち、いつもの黒ずくめのいでたちで人々を睥睨している。その表情は、燭台に揺らぐ光のせいでよくわからなかった。
ローギスの言葉はユクィルス領内でのいくつかの小競り合いにふれ、その首魁を叩き潰す誓いへとつづいた。冬の間に全土の兵士の引き締めをはかり、砦を修復し、治水を行って街道をあらためて整備すると計画を語り、そのための強い激励を言葉にこめる。卓をかこむ兵士たちへと、その声はまっすぐに向けられていた。
どうやらここに招かれた兵士は、兵長や隊長など部下をかかえる立場の者たちらしい。彼らをローギスが巧みに鼓舞し、命令をつたえていくのを聞きながら、イーツェンはこれがこの宴の目的なのだと悟っていた。冬の前に兵を一度とりまとめ、新たな任を与えるための、景気付けの宴だ。
ほっとする。と同時に、自分の不安のばかばかしさに小さな笑みが浮かんだ。シゼが言うのが当たり前だ。わざわざシゼのために、イーツェンのために、オゼルクがこんな手間をかける筈などない。
てきぱきと、声に力をこめて言葉を語り終えたローギスが、酒杯を手にした。空にかかげる。あわててイーツェンも杯を取った。
「ユギア・ザーリク!」
乾杯の掛け声がこだまする。周囲と同じ仕種で酒をかかげ、声をそろえた。
はこばれてくる料理をながめ、皿につまれた獣の肉を見ながら、早く宴が終わらないかと思う。明日にはシゼが城を発つ。そばにいられる時間が、刻々と短くなっていく。早く塔に戻りたいと願いながら、イーツェンはふたたびの乾杯の掛け声に笑みをつくり、声をあわせた。
頭がぼんやりと重い。はやされて、苦手なワインを一杯干したせいだろうか。
イーツェンは、ユクィルスの葡萄酒と相性が悪い。赤黒く、濃くつまったような味のそれは、舌の上を刺すばかりでなかなか喉へすべりおちていってはくれず、飲めば喉奥から胃の腑へと重苦しい熱を残す。
ざわざわと、周囲の音がかさなりあってきこえる。卓と卓の間を吟唱師が首の長い六弦琴をかき鳴らしながら歩き回り、イーツェンの知らない小柄な道化が調子っぱずれな歌をがなっては、周囲が笑い出していた。
歌の、いささか卑猥な内容にイーツェンは視線をあげたが、フェインはもう席を引き取った後だった。もともと少なかった女子供は、そのほとんどが姿を消している。
兵士が囲んでいた長卓が壁際によせられ、床が大きくあけられていた。兵は立って食べつづける者もいれば、給仕の女を口説いている者もいる。オゼルクとローギスが兵の間にまじって杯を回しているのに気付いて、イーツェンはおどろいた。
──成程、と、一瞬おいて納得する。兵とともに酒を酌み交わすことで、彼らとの仲間意識を強めているのだ。
ユクィルスはそもそも、海を渡ってきた一群が興した国だ。周囲の国々を征服し、あるいは同盟として組み入れながら領土をひろげてきたが、今やかかえる兵士の出身も民族も多岐に渡る。その雑多な集団をつなぎとめ、忠誠を得るために、ローギスやオゼルクが気を払うのは当然だった。
自分は何をするべきかと、飲めないワインの杯を両手でつつむように持ったまま、イーツェンはぼんやり考える。シゼを逃がして、それから? 人質としてここに居続けることが一番の存在意義だが、ほかにできることもあるだろう。リグのために。
兵士と冗談をとばして笑っているオゼルクの姿を見ると、何だか自分が情けなくなった。オゼルクは、己の役目を果たしている。それに引き比べて己は何をしてきたか、ユクィルスの城へ来てからの二年を思って、イーツェンは溜息をついた。ここに居ることだけで必死だった。耐えるだけで精一杯で、己のことばかりにとらわれていた。もっとほかに多くができたかもしれないと、今になって思う。もっと、何か。
席を回ってきた誰かに強いられて、もう一口飲む。笑みを返して、小柄な男──たしか、河港の商館書記だ──と中味のない会話をしていると、背後でひときわ大きな声援があがった。
「余興ですね」
と、男が笑う。目をほそめて振り向いたイーツェンは、兵士たちが長剣を手にして一斉に剣舞まがいのものをはじめたのを見た。上座の卓にもいた騎士たちもくわわり、十人あまりで派手な音を鳴らしながら鉄の刃を打ちあわせている。
空気を切り裂く重い金属の音があたりをふるわせ、イーツェンはびくりと身をすくめた。書記の男が肩に手を置く。
「儀式用の剣ですよ」
「ああ‥‥」
イーツェンは無理に笑みをつくったが、体は硬く緊張していた。剣の音にではない。肩にのせられ、さりげない重みをつたえてくる男の手が、厭悪の感情を呼び起こす。イーツェンの気のせいか、その手は奇妙になれなれしい。この男を知っていただろうかと、愛嬌のある丸顔を見上げたが、よくわからなかった。
呼吸を合わせて互いの剣を打ち鳴らす激しい音の連続に、首すじの毛が逆立つ気がした。どうしても、シゼの演じてみせた「余興」のことを思い起こしてしまう。あの激しい動き、剣にからみついたシゼの血の色、がくりと片膝を床に落としたシゼの姿──あれが示しあわせた「演技」であったとしても、イーツェンはもう一度あんなものを見たくはなかった。
(──まさか)
ふいに恐怖がつきあげ、イーツェンは室内を見回した。が、シゼの姿はない。今夜は別室に控えさせられている。その方がシゼも食事をとりやすいし、休めるだろうとも思って、イーツェンは何も考えずにシゼと離れた。シゼをともなってオゼルクと会うより、一人で対峙した方がいいと、胸をなでおろしさえしたのだ。
(まさか、オゼルクは)
宴をわざわざ開くことなどできまい。だが、もし。宴ではなく、この招待が罠だったとしたら。オゼルクがイーツェンをいきなり招いたのは──
喉が苦しくなる。全身がぞっと冷え、イーツェンは卓のはじを両手でつかんで体を支えた。その耳元にふいによく知った声がする。
「余興だ、イーツェン」
男の手が置かれたのとは逆の左肩を、長い五指につかまれた。イーツェンは唇を噛んでまなざしを上げる。
オゼルクの唇には微笑があった。全身黒に染めたようなよそおいでも、いやだからこそ、彼の端正な美しさがきわだっていた。
オゼルクがちらりと目を向けると、書記の男がイーツェンから手をはなした。かるく手を叩き、とりつくろうように話しかける。
「迫力のあるものですなあ、殿下」
「今すこし、おもしろいものをお見せしよう。楽しまれよ」
喉にかかるようなやわらかな声でオゼルクが返し、イーツェンを立たせた。自分の腕をつかんで歩かせようとするオゼルクの手を、イーツェンは不自然に見えないよう手を添えて押しやった。
「自分で歩けます」
ふっと、鼻先で笑ったが、オゼルクはイーツェンから手を離した。だが離れる寸前の手は一瞬、イーツェンの腕にくいこみ、服の下の肌に見えない痕を残した。
上卓からも人々が席を立ち、酒杯を手にして集まってくる。酒の匂いがたちこめて、イーツェンは頭の芯がズキズキと脈を打った。
兵士が床を踏みならす。左右の男たちと刃引きの剣を打ちあって歓声をあげた。その中から歩み出てきたシゼの姿を見たが、イーツェンは驚かなかった。心に予感はあった。
それでも、心臓が凍りつくような気がする。
(余興だ)
そう、単なる余興のはずだ。オゼルクの横に立ちながら、耳にどよもす人の歓声に心が呑みこまれそうになる。唇を結び、息をつめて、イーツェンはシゼの姿を見つめた。
シゼは落ちつき払っているように見えた。体から力を抜き、両手を脇にたらして自然に立っている。腰に下がった剣に目をとめて、イーツェンは茫然とした。それはいつものシゼの剣──普通の長剣よりすこし短い、彼の帯剣だった。決闘用の剣ではない。
それからシゼの前に引き据えられた男を見て、目をみはる。騎士ではない。いや、兵士ですらない。薄汚れた服をまとい、筋肉の盛り上がった体は白っぽい鞭の傷に覆われ、垢じみた髪は奔放にのびている。首にはめられた革枷は、囚人のものだった。
オゼルクの顔へすがるような目を向けると、彼は微笑を返してきた。だが青い目は笑っていない。
「何をする気です」
かすれた小さな声で、イーツェンはたずねた。オゼルクが右肩をすくめる。
「余興だ。景気づけにな」
「‥‥何故シゼを」
「何故だと思う」
「あなたは──約束した、彼を放っておくと──」
「お前はジノンとたくらんでいることを私に言わなかった」
そっと、オゼルクが囁き、イーツェンは硬直した。やはり知っているのだ、オゼルクは。知っている。イーツェンが、シゼを逃がそうとしていることを。
男の手に抜き身の剣が持たされ、彼を拘束していた腰繩が外された。シゼと男は数歩の距離で向かい合う。二人とも決闘の前作法を取らないまま、互いにひたと視線をあわせ、相手の隙をうかがっていた。
ぞくりとイーツェンの背すじを戦慄が抜ける。シゼと向きあった男の右肩の下がり具合、両足のひらきかた、シゼが一歩動いたのに呼応して動かした足の位置──そういったものがいきなり組み合わさって、パチリと一つの形をつくりあげたように見えた。
──手だれだ。
囚人の中からわざわざ使い手をえらび出し、剣を持たせてシゼと対峙させる。その瞬間、イーツェンにはオゼルクのたくらみが読めた。
これは、寸留めの対決ではない。
悟って身をのりだすイーツェンの腕を、オゼルクがぐいと引きもどした。眼前でぐうっと闘気がふくれあがり、まるで炎のようにイーツェンの肌をあぶる。声が出せない。
シゼと男の間で銀光がはしり、耳をつんざく剣の音が死闘のはじまりを告げた。